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彼女がいると分かっても好きだった彼
今から約38年も前の思い出です。
私は中学1年生の時に同じクラスのA君を好きになり、2年生でクラスが替わっても3年間ずっと好きでした。
3年生になった時、A君に彼女が出来たことを噂で聞きました。
彼女になったB子は、明るくて皆に好かれていた子でした。
B子のような子がA君の彼女だったら仕方がないと自分に言い聞かせながらも
ずっとA君への気持ちをあきらめることは出来ませんでした。
野球部で活躍していたA君を見かける度に胸がきゅんとなっていた淡い恋でした。
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私の恋の卒業式でもあるんだ
卒業式を迎え、式の間はずっと中学での3年間とA君への思いに浸っていました。
バレンタインデーも勇気がなくて3年間1度もチョコレートを渡すことは出来なかったのです。
でも、卒業式の日の私はいつもと違っていました。
今日は私のA君への恋の卒業式でもあるのだと思いました。
私の友達に頼んで卒業式が終わってからA君を呼び出してもらい、ついに3年間の思いを伝えました。
屋上へ行く階段の踊り場で、階段の窓からは明るい太陽の光が入ってくる中で告白しました。
「A君、私はA君を3年間ずっと好きだったよ。」
少し間があってからA君が口を開きました。
「突然でびっくりしちゃってるよ。でも俺はB子が好きで付き合っているんだ。」
「B子と付き合っていることは知ってるし、それは構わないの。
今日A君にここに来てもらったのはA君と付き合いたいとかじゃなくて。
卒業式に私の3年間の気持ちを伝えておきたかっただけなの。
伝えられてすっきり出来たよ。」
「そうか。」
こんな会話をした後、お互いの教室に戻りました。
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すっきりしたなんてウソ
言葉ではすっきりしたと言ったものの、実はすっきりどころか気持ちはぐちゃぐちゃでした。
わかっていてもA君の口からB子と付き合っていることを直接聞いてしまったことにあらためてショックを受けました。
A君と私は逆方向の高校に行くから、もう会うことは99%ないだろうという寂しさでいっぱいでした。
まだ15歳の子供だったけど、子供なりに真剣に好きでした。
そして、人を好きになっても報われない辛さを人生で初めて味わった15歳の春でした。
涙をふきながら学校の外に出ました。
その日は春の訪れを感じさせる陽気で暖かく、悲しくてどんよりとしていた私の気持ちと正反対のお天気でした。
学校から家までは徒歩30分程で、歩いていると途中のお店からりりィの「オレンジ村から春へ」という曲が聞こえてきました。
春になって心もぽかぽかと温かくなるような曲を聴いていたら、いつの間にかその歌を口ずさんでいる自分に気が付きました。
この日天気が良かったのは、きっと空も元気を出して!と私を励ましてくれているのだろうかと思いました。
この時見上げた空の青さが今も鮮明に記憶に残っています。
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卒業してから22年。なんとA君が!
高校生になりA君と会うことも全くなくなり、A君が高校卒業後に東京に就職したと風の便りで聞きました。
中学校を卒業してから約22年後。すでにに結婚していた私は、町の役場でアルバイトしていました。
そんなある日、役場の窓口に立った人の顔を見て心臓が飛び出すかと思いました。
それはA君でした。
東京から地元に戻ってきて、今も独身なのだとA君は笑顔で私に告げました。
A君の爽やかな笑顔を見ていると、好きでどうしようもなかった中学生の頃の自分をとても懐かしく思い出しました。
家に帰ってから、夫にA君と会ったことと会話の内容を伝えました。
夫には、以前私がA君を好きだったことは話してありました。
なので、夫もA君に会って懐かしかっただろうとにこにこしながら言ってくれました。
あんなにA君を好きだったのに、大人になって久し振りに会っても懐かしい以外の感情がなかったことは自分でも不思議でした。
時の流れは、人のいろいろな気持ちも「数ある思い出の1つ」に変える力があるのだと思いました。
この日の夜、動画サイトで久し振りにりりィの「オレンジ村から春へ」を聴いてみました。
コーヒーを飲みながら、懐かしくてほろ苦い淡い恋と当時の自分に思いを馳せていました。
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